形状記憶合金を使ってみた話

こんにちは.たのしいロボット帝国15のARGです.
たのしいロボット帝国は滅亡寸前ですが,私は元気です.
今日は形状記憶合金のお話をしたいと思います.

この記事はrogy Advent Calendar 2019 16日目の記事です.

はじめに

ロボット製作にあたって重要なアクチュエータ.世間には様々なアクチュエータ製品が存在していますが,要求仕様を満たすものが見つからない,強いアクチュエータは高価すぎて買えないなどの理由で,アクチュエータを自作する人も多いと思います.

アクチュエータを自作するにあたって,電磁モータはコイルを巻くのに熟練が求められますし,空圧アクチュエータはタンクなどの安全管理に不安があります.そこで今回は,簡単に作れて一定以上の性能があり,管理も楽なアクチュエータとして,形状記憶合金を試してみました.

形状記憶合金について[1]

(まだ形状記憶合金の理解が不十分なため,一部記述が間違っているかもしれません.ご了承ください)

形状記憶合金は,簡単に言えば低温時には外力によって容易に変形し,高温時に元の形状に戻る性質をもった合金です.

このような性質は,金属の相変態に起因します.形状記憶合金は低温時にマルテンサイト相(オーステナイト相から結晶格子が変形した相),高温時にオーステナイト相(面心立方構造の相)となり,マルテンサイト相では容易に変形し,オーステナイト相で形状が回復します.

機械系で材料工学の授業を履修した人は,ここで「なんでマルテンサイト相で変形しやすいんだ?」と思うかもしれません.一般的な炭素鋼のマルテンサイト相は硬くて脆い性質があります.また,変形の際に結晶面の滑りが発生し,このときに原子が高いポテンシャルを超えて移動するため,安定位置が変化(塑性変形)しやすく,これを加熱してオーステナイト相にしても元の形状には戻りません.

これに対して,形状記憶合金(Ni-Ti合金など)のマルテンサイト相は結晶面が低応力で移動するため,結晶面の滑りは発生せず,それぞれの原子間の結合が変化しないような変形が行われます.このため,加熱してオーステナイト相に逆変態させた場合に,原子が再び面心立方構造に戻ることで全体の形状も元に戻ります.

以上の性質から,形状記憶合金の復元力を利用してアクチュエータを作ることができます.

実際に作ってみた

実際に形状記憶合金でアクチュエータを作ってみましょう.今回,材料は線径0.4mmのNi-Ti合金未記憶ワイヤ(変態点70℃)を使用します.

アクチュエータ作成にあたり熱処理のための炉が必要となりますが,これについては小型電気炉mini-BS1(日陶科学)を購入して使用しました.

加工方法としては,まず形状記憶合金を所望の形状(今回はコイルバネ型)に曲げ加工し,両端に端子を取り付けます.その後,電気炉で一定時間加熱し,水中で急冷(焼き入れ)します.このことによって合金の形状が記憶されます.

作成した形状記憶合金アクチュエータを駆動してみます.駆動するためには合金を加熱する必要がありますが,今回は合金に通電することによるジュール熱で加熱を行います.

100gの重りを吊り下げてアクチュエータを駆動した結果,形状記憶合金の全長の1割程度の変位が確認できました.今回はアクチュエータ形状を深く考えず雑に作っていましたが,形状の最適化などによって,より収縮率や収縮力の高いアクチュエータが作れそうです.また,本アクチュエータはコイルバネ以外の形状にも適用できるので,今後いろいろと試してみたいと思います.

おわりに

今回は形状記憶合金のお話でした.市販のアクチュエータに比べて自由に形作ることができるのが形状記憶合金アクチュエータの魅力だと思います.皆さんも興味があればぜひ試してみてください.

参考文献

[1] 宮崎 修一, 大塚 和弘『形状記憶合金の基礎とその応用』精密機械学会誌 42巻 11号 pp.571-579 (1989)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です