疫病退散☆ゲーミングマニ車

こんにちは.
たのしいロボット帝国所属の15ARGです.

今回はゲーミングカラーのマニ車を作ってみたので,その紹介をしたいと思います.

 

動機

(注:本記事が執筆された2020年5月には,新型コロナウイルス感染症COVID-19が世界的に流行していました.)

コロナの影響でコミケや伺アニなどイベントが次々と中止・延期したため,家で積みゲーを消化していた時のことです.
東方星蓮船というシューティングゲームに登場するボスの一人が魔人経巻というゲーミングカラーの巻物を持っているのですが,これを見て閃きました.
「ゲーミングカラーの巻物がありなら,ゲーミングカラーのマニ車もありでは?」と.

マニ車とは

(筆者は仏教に詳しくないので,解説に間違いや失礼な表現があったらすみません.)

マニ車とは,主にチベット仏教で用いられる仏具です.形状は円筒形で,側面にマントラが刻まれており,内部にお経が書かれた紙が入っています.これを回すことで,お経を唱えることと同じ効果があるとされています.

「マントラ」とか「お経」とか言っても分からない人もいると思うので簡単に説明すると,以下の通りです.
・マントラ:真言とも言う.仏に対する祈りの言葉.キリスト教における祈祷文.神道における祝詞.
・お経:仏の教えを記した聖典.キリスト教における聖書.神道における記紀.

こんな感じで,マニ車はありがたさと手軽さを兼ね備えた仏具となっています.マニ車を製作することで自分の技術力だけでなく徳も高められると思った(この考え方自体,煩悩にまみれていて徳が低そう)のと,コロナ対策グッズを何かしら作ってみたかったので,ゲーミングマニ車の製作に踏み切りました.

概念設計

作品を設計するにあたり,「マニ車であること」「ゲーミングカラーであること」の2点を満たす必要があります.

まず「マニ車であること」については,以下が必要です.
・持ち手部分に対し回転部分が相対的に回転すること
・回転部分内部にお経が書かれた紙を配置すること
・回転部分の側面にマントラを書くこと
今回は疫病退散を祈願して,薬師如来のお経(薬師瑠璃光如来本願功徳経)とマントラ(“唵 呼盧呼盧 戰駄利 摩燈祇 莎訶”.実際には梵字で記述.)を使用します.

次に「ゲーミングカラーであること」については,以下が必要です.
・大部分のパーツが非光沢の黒色であること
・LEDなどにより一部パーツが虹色に光ること

以上の要求仕様に気を付けて設計をしていきます.

機械設計

CADソフト(Inventor)で各パーツを設計します.機械設計におけるポイントは以下の通りです.
・持ち手部分と回転部分のスムーズな回転のため,2個のベアリングにM5ボルトを通し,ボルトをダブルナットで固定します.
・下図において回転部分とおもり部分の接続を省略していますが,実際にはステンレス製フレキシブルチューブを用いて接続しています.

回路設計

マニ車を光らせるためにLED等を配置する必要があります.単に光るだけでは面白みが少ないため,回転を検知して光る仕様にしました.
「回転を検知して光る」方法について考えます.最初は軸部にDCモータを配置して回転時の起電力でLEDを点灯させることを考えましたが,少し実験した結果,マニ車の回転速度(100~200rpm程度)で市販のDCモータ(RE-280RAなど)を回転させても大量のLEDを点灯させることは難しそうでした.
このため,電池を内蔵し,何らかのセンサで回転を検知してLEDを点灯させることを考えます.ジャイロセンサを使用すると回路が複雑になりそうだったので,今回は傾斜スイッチ(円筒ケースの中に鋼球が入っており,一定以上の角度になると鋼球が転がって接点がONになるスイッチ)を複数配置し,回転時の遠心力を利用して回転検知を行うことにします.
3個の傾斜スイッチが全てOFFのときにLEDが点灯するように,以下のような回路としました.

 

製作・塗装

実際にゲーミングマニ車を作成していきます.

まず,大部分の部品を3Dプリンタで出力します.
3DプリンタはFlashForgeのFinderを使用し,素材(フィラメント)はPLA(ポリ乳酸)を使用しました.
黒色のフィラメントを持っていなかったため,別の色のフィラメントで出力し,後で塗装することにします.

次に,回転部分の側面を作成していきます.今回のマニ車では側面に書くマントラを光らせようと思うので,透明な素材(アクリルパイプ)を加工・塗装して作成します.虹色に光らせるためにはLEDの光を単に透過させるだけでなく,各LEDからの光を散乱させ拡散する必要があります.光を散乱させる方法として物体(今回はアクリルパイプ)の表面を粗くすることが挙げられます.工業的にはサンドブラストやレーザ彫刻が用いられますが,今回は紙やすり(#100~#200程度)を使用した手磨きを行いました.


上の写真が,やすりがけ前(左)とやすりがけ後(右)のアクリルパイプの比較です.やすりがけによって,表面が半透明になっていることが分かります.

このアクリルパイプを塗装していきます.マスキングテープでマスキングを行い,サーフェイサーラッカースプレー(マットブラック)つや消しトップコートで塗装します.

続いて回路を実装します.使用した部品は以下の通りです.
5mm赤色LED ×6個
5mm緑色LED ×6個
5mm青色LED ×6個
イルミネーションLED OSTB5131A-ID ×1個
カーボン抵抗1/6W100Ω ×20個
トランジスタ 2SC1815GR ×1個
ロータリスイッチ ×1個
傾斜スイッチ ×3個
電池ケース ×1個
ボタン電池 LR44 ×2個


上図が基板の外観です.メイン基板の金色の円筒が傾斜スイッチです.
おもり部分LED基板については,後述する不具合修正においてコンデンサを追加した写真になっています.

3Dプリント部品も黒く塗装し,組み立てを行っていきます.LEDを取り付けて点灯させると,いい感じにゲーミングカラーで発色することが確認できました.

組み立て時に,回転部分の内部にお経を書いた紙を入れます.

組み立てが完了するとこんな感じです.

動作確認・不具合修正

組み立てたゲーミングマニ車をさっそく回してみました.

上の動画のように動作しました.不具合として,外側のおもり部分にイルミネーションLED(時間とともに色が変化するLED)を入れていましたが,赤色のまま色が変化していません.原因を探るために動作をよく観察すると,小さく「カチャカチャ」というような音が聞こえます.これは回転時に傾斜スイッチ内の鋼球が遠心力以外に並進運動の慣性力を受けて接点に衝突している音だと思われ,この衝突によって瞬間的にイルミネーションLEDへの電流が止まっていると考えられます.
イルミネーションLEDを正常動作させるために,回路を修正します.イルミネーションLEDの付近にコンデンサを配置して解決を図ります.

修正後に動作確認すると,イルミネーションLEDの動作改善が確認されました.

これにてゲーミングマニ車の完成です!
完成した感想ですが,ゲーミングカラーの塗装について経験を積めたのと傾斜スイッチの実装について発見があったのが良かったと思います.また,マニ車を回すことで徳が高まったかは分かりませんが,回すとコロナのストレスが癒されるような感じがしました.(あくまでも個人の感想です)

おわりに

以上,ゲーミングマニ車の設計・製作でした.
大学や秋葉原に行けない日が続いて思うように創作ができない人も多いかと思いますが,こういう状況だからこそできる発想・創作もあると思います.
コロナに負けず,創造的な在宅ライフを過ごしていきましょう!

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